
自社ブランドの製品を開発・販売する際、製造の専門知識や設備がない企業にとって、OEMやODMといった外部への製造委託は有効な手段です。
これらの方法を活用できれば、開発コストや時間を抑えながら高品質なオリジナル商品を販売できます。
しかし、
「OEMとODMの違いが正確にはわからない」
「自社のアイデアを実現するには、どちらの方式を選べば良いのか判断できない」
と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事ではOEMとODMそれぞれの定義やメリット・デメリット、そして具体的な違いを徹底的に比較解説します。
さらに最適な方式を見極める判断基準も紹介しています。
この記事を最後までご覧いただき、OEMとODMの違いを正しく理解して自社ブランド製品開発をスムーズに進めるための参考にしてください。

監修者
米原 広兼
ジャグー株式会社 代表取締役
2015年に楽天入社後ECコンサルティング部に所属
作業やアドバイスではなく実行支援の重要性を感じ2020年にEC支援会社のジャグーを創業。
支援企業の中でSOY受賞経験は9店舗。
目次
OEMとODMの基礎知識
OEMとODMは、外部の専門業者に製品開発や製造を委託する際に検討する2種類の方式で、委託する範囲に違いがあります。
なお、「設計・企画への関与」と「製造への関与」を基準にして比較すると、以下の図のような違いがあります。

外部委託を検討する際にOEMとODMの違いや特性を理解しておけば、自社に最適な選択ができるでしょう。
次から解説するOEMとODMの基礎知識をご覧いただき、外部委託する際の前提知識を理解するための参考にしてください。
OEM(OriginalEquipmentManufacturing)とは?
はじめに解説する「OEM(オーイーエム)」とは、発注元が製品の設計や開発を担い、他社に製造だけを委託するビジネスモデルです。
「Original Equipment Manufacturing」の頭文字を取った言葉で、読み方はシンプルに「オーイーエム」と言い、直訳すると「元の装置の製造業者」または「元の装置の製造」となります。
日本語では「相手先ブランド製造」「受託製造」などと訳されます。
一般的には「発注元(ブランド企業)が設計や開発を行い、製造だけを他社(製造メーカー)に委託するビジネスモデルのことで、AppleがiPhoneの設計を行い、製造をFoxconnに委託している事例の知名度が高いのではないでしょうか。
OEMを活用すれば、自社で製造設備や製造ラインを持たないブランド企業でも、自社で企画した製品を市場に投入できるでしょう。
たとえば、あるアパレルブランドが服のデザインや仕様だけを決め、その生産工程を外部の専門工場に委託し、アパレルのブランド名で販売するなどがOEMの代表的な事例です。
また、自社で製造設備に多額な初期投資をしなくても、オリジナルの設計に基づいた製品を開発・販売できるようになる点もOEMの特徴のひとつと言えます。
ODM(Original Design Manufacturing)とは?
次に解説する「ODM(オーディーエム)」とは、製品の設計・開発から製造までを一貫して外部のメーカーが担当するビジネスモデルです。
「Original Design Manufacturer または Manufacturing」の頭文字を取った言葉で、こちらの読み方もシンプルで「オーディーエム」と言います。
直訳すると「元の設計の製造業者」または「元の設計の製造」となり、日本語では「相手先ブランドによる設計・生産」「設計受託生産」などと訳されるのが一般的な表現です。
ODMでは、委託を受けたメーカー側が製品開発の大部分または全部を主導するため、発注元の企業はメーカーが用意した既存の設計や製品をもとに、一部調整を加えて自社ブランドとして販売するケースが多くみられます。
たとえば、電化製品メーカーが持つ既存の設計アイデアを別企業が採用し、自社のブランド名をつけて製品を生産・販売してもらう形式が考えられます。
また、ODMは自社に製品開発のノウハウがまったくない場合や、開発にかかる時間や費用を大幅に削減したい企業におすすめの委託方法です。
さらに、メーカーの高い技術力と開発力をそのまま活用できる点が、ODMの大きなメリットと言えるでしょう。
OEMとODMの違いとは?3つの視点で比較
OEMとODMの違いは、製品の企画や設計の責任がどちらにあるかですが、以下3つの視点で比較するとより理解が進むでしょう。
視点 | OEM | ODM |
1.設計責任 | 発注元 | 製造メーカー |
2.仕様変更の柔軟性 | 高い(自社設計) | 低め(パッケージ化された提案が多い) |
3.ノウハウの蓄積 | 発注元に残る | 製造メーカーに偏る |
また、企画から販売までの各段階ごとに「発注元(ブランド企業)」と「製造メーカー」のどちらが責任をもつのかを以下の表にまとめました。
項目 | OEM | ODM |
企画 | 発注元(ブランド企業) | 発注元(ブランド企業) |
設計や仕様 | 発注元(ブランド企業) | 製造メーカー |
開発 | 発注元または製造メーカー | 製造メーカー |
製造 | 製造メーカー | 製造メーカー |
販売 | 発注元(ブランド企業) | 発注元(ブランド企業) |
以上のことから、OEMとODMでは、企画と開発の主導権の違いが両者を区別する指標となるでしょう。
設計と開発の責任範囲の違い
OEMとODMの大きな違いは、製品の設計と開発における責任範囲にあります。
OEMの場合、発注者となるブランド企業が製品の細かな仕様やデザインなどの設計図を決めて、製造を委託します。ブランド企業は技術力のある製造メーカーと組むことで、大量生産のスケールメリットを活かせるのがOEMの特徴です。
一方、ODMの場合は、製造メーカーが市場のニーズや自社の技術に基づき、製品の企画や設計、開発の段階から、製造までを一貫して行います。
発注者のブランド企業は、製造メーカーへ欲しい製品を要望するだけで、製品設計から試作品の制作、その後の量産体制までワンストップで提供を受けられるのがODMの特徴と言えます。
この設計と開発の責任の所在が、OEMとODMの違いを把握する上で重要な判断基準となるでしょう。
ブランドと製造の関係性の違い
OEMとODMでは、製品に対するブランド企業と製造メーカーの関係性に明確な違いがあります。
OEMの場合は、発注元であるブランド企業が製品に自社のブランド名を付けて販売しますが、実際の製造は外部の専門業者に委託します。
そのため、自社のブランドイメージや製品の品質基準を保つために、製造工程における品質管理や委託先との連携が必要です。
一方、ODMの場合、製造メーカーが製品の企画段階で品質管理も含めて設計から製造までを主導するケースが多く見られます。
発注元のブランド企業は、製造メーカーの設計をベースにブランド名だけ販売できるため、製品開発にかかる時間やコストを削減できるメリットがあります。
コスト・スピード・自由度の違い
OEMとODMでは、製品開発にかかるコストやスピード、さらに製品の仕様に対する自由度に違いがあります。
OEMでは、発注元のブランド企業が製品設計から試作まで行うため、製品完成までの期間が長くなりやすく、初期費用も高くなる傾向があります。
しかし、自社の思い通りに製品を開発できるため、ブランド価値を最大化しやすいメリットもあります。
一方でODMでは、製造メーカーが開発済みの設計や技術を活用できるため、企画から製品化、量産までの期間が短縮され、開発にかかる初期費用も比較的抑えられるのがメリットです。
ただし、製造メーカーによる既存の設計をベースとするため、製品の独自性や自社ならではのオリジナリティを反映しにくいデメリットがあると言えるでしょう。
OEMとODMのメリットとデメリットとは
ここからは、OEMとODMそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
以下の表で、各メリットとデメリットをまとめています。
気になる項目からご確認いただき、委託方法を選択する際の参考にしてください。
OEM | ODM | |
メリット | 初期投資や製造コストを削減できる在庫リスクが軽減するブランド力を強化できるコア業務に集中できる | 商品開発ノウハウが不要短期間で商品化できる低コストで量産できる |
デメリット | 製造ノウハウが蓄積しない利益率が低下する委託先が競合化するリスクがある | 独自性の維持が困難価格や利益のコントロールが難しい製造プロセスが不透明 |
OEMの4つのメリット

OEMのメリットは以下4つです。
- コストを削減できる
- 在庫リスクが軽減する
- ブランド力を強化できる
- コア業務への集中できる
順に解説します。
1.コストを削減できる
OEMは自社で製造工場の建設や高価な製造設備を購入する必要がないため、初期投資を削減できるメリットがあります。
自社で製造部門をゼロから立ち上げる場合と比較して、工場建設費用や製造ラインの構築だけでなく、製造部門の人員の採用や維持に関わる費用なども削減が可能です。
なお、委託先の製造メーカーは既存の製造体制や経験豊富な人材を活用するため、自社で製造体制をゼロから構築する場合と比較して、製品生産の費用を抑制できるのです。
また、試作品の製造コストも、委託先との条件交渉によっては安価に抑えられる場合があります。
2.在庫リスクが軽減する
OEMでは、在庫管理のリスク軽減ができるメリットもあります。
たとえば、必要な時に必要な数だけ製品の製造を外部に依頼することで、売れ残り在庫を抱えてしまうリスクを防げます。
そのため、過剰な在庫を保管するためにかかる費用や、製品の市場価値が時間の経過とともに低下するといった損失を避けられるでしょう。
特に市場に初めて出す新商品や、流行の影響を受けやすい商品を扱う場合は、在庫リスクを軽減できるメリットは大きくなります。
3.ブランド力を強化できる
OEMの活用で、自社のブランド力を強化するメリットもあります。
OEMでは自社ブランドのコンセプトやユーザーニーズを反映したオリジナルの製品を作りやすい特徴があります。
たとえば、他社の製品との明確な差別化を図れるオリジナルの製品を販売できれば、市場における独自のブランドイメージをより強固にできます。
また、自社の企画に基づいて製造された製品を展開すれば、ユーザーがブランドに関心を持ち、一貫したブランドの世界観を伝えることが可能になります。
以上のことから、OEMは製品販売の効率が高まるだけでなく、ブランド力を強化して、顧客ロイヤリティの向上や、新規ユーザーの獲得に貢献できる方式と言えるでしょう。
4.コア業務への集中できる
OEMを活用すれば製品の製造を外注して、自社リソースをコア業務に集中できるのがメリットと言えます。
OEMは、製造に関する複雑なプロセスや管理を製造メーカーへ任せられるため、自社は製品の企画やデザインの決定、マーケティング活動や販売活動といった、専門性の高い業務に経営資源や人材を効率的に投資できます。
また、ECサイトを運営者がOEMを活用すれば、Webサイトの集客施策や、カスタマーサービス、販売戦略の策定などのコア業務に集中できるでしょう。
OEMの3つのデメリット

OEMの以下3つのデメリットも見ていきましょう。
- 製造に関するノウハウが蓄積しない
- 製造を委託するため利益が低下する
- 委託先が競合になるリスクがある
順に解説します。
1.製造に関するノウハウが蓄積しない
OEMは、製品の製造プロセスを外部に委託するため、製造に関するノウハウが自社に蓄積されにくいというデメリットがあります。
将来的に製品の製造を自社による内製化を検討している場合、製造ノウハウが十分にない状態では、スムーズな移行や安定した生産体制の構築が難しくなる可能性があります。
そのため、OEMで製造メーカーに頼り切るのではなく、自社でも製品製造に関する技術力を鍛え、知識を蓄えておくようにしましょう。
2.製造を委託するため利益が低下する
OEMを活用すると製品あたりの利益率が低下しやすいデメリットがあります。
なぜなら、OEMでは委託先の製造メーカーの利益分が製造費用に上乗せされるため、自社で製造する場合と比較して製品あたりの原価が高くなるからです。
特に市場競争が激しいECショッピングなどの分野では、製造原価の高騰が価格競争力の低下を招いてしまう可能性もあります。
OEMにおけるブランド企業の利益を確保するためには、製品の企画力や販売戦略、ブランド構築といった付加価値を高めることが重要です。
3.委託先が競合になるリスクがある
OEMで製品の製造を外部に委託する場合、委託先の製造メーカーが将来的に競合となる可能性があります。
OEMは製造メーカーが発注元のブランド企業から製品に関する技術情報やノウハウを得られるため、類似製品を開発して販売する可能性が考えられます。
特に高い技術力を持つ委託先と協業する際には、機密情報の漏洩や技術を不正利用されない対策が必要です。
たとえば、製造委託契約において、情報の秘密保持義務や競業を避ける義務に関する明確な条項を設けるなどの対策が有効でしょう。
しかし、完全に競合リスクをなくすことは難しいため、OEMで委託先を選ぶ際は、製造メーカーの実績や信頼性を慎重に見極めることが重要と言えます。
ODMの3つのメリット

次に、ODM(オーディーエム)について、以下3つのメリットを解説します。
- 商品開発のノウハウが不要
- 短期間で商品化できる
- 低コストで量産できる
順に解説します。
1.商品開発のノウハウが不要
ODMのメリットは、自社に商品開発に関する知識や技術的なノウハウがなくても製品を製造できることです。
ODMは製品の企画段階から製造までを一貫して製造メーカーに任せられるため、「どのような製品を販売したいか」というアイデアさえあれば、オリジナルブランドの製品を製造できます。
また、製造メーカーはすでに開発済みの製品や、技術基盤を活用してスピーディーに製品化を進められるのも大きなメリットと言えます。
特に新しい分野への参入や、多様な製品ラインナップを短期間で揃えたい場合に、ODMがおすすめの手段です。
2.短期間で商品化できる
ODMを活用すると新しい製品を短期間で市場に出すことが可能なのもメリットのひとつです。
OEMでは製造メーカーがすでに持っている製品の基本設計や開発プロセスを利用できるため、ゼロから開発を始めるOEMと比較して、製品化までの期間を大幅に短縮できます。
そのため、発注元のブランド企業は製品の設計や試作品の製作といった開発工程にかかる時間を短縮し、スピーディーに製品の量産体制へと移行できるでしょう。
これにより、変化の激しい市場トレンドに素早く対応したり、競合他社に先駆けて新製品を販売開始したりできるODMの強みを活かせます。
短期間で事業展開を目指す企業にとっては、ODMは有効な手段と言えるでしょう。
3.低コストで量産できる
ODMは製品の量産を比較的低いコストで実現できるメリットもあります。
ODMは製造メーカーの設計や製造ラインを活用するため、ブランド企業が負担する開発費用や製造に関わる初期費用が抑えられるためです。
製造メーカーは複数のブランドからODMの依頼を受けることで、開発コストや設備費用を分散して製品単価を比較的安価に設定しやすい特徴があります。
そのため、発注元になるブランド企業は製造コストを抑えながら大量生産を行って、製品の利益率を高めやすくなります。
特に低価格帯での競争力を発揮したい製品や、豊富な製品ラインナップを短期間で揃えたいブランド企業にとってODMは魅力的な手段となりえるでしょう。
ODMの3つのデメリット

ODMの以下3つのデメリットも見ていきます。
- 独自性の維持が困難
- 価格や利益のコントロールが難しい
- 製造のプロセスが不透明になる
順に解説します。
1.独自性の維持が困難
ODMのデメリットとして、製品の独自性を保つのが難しい点が挙げられます。
ODMは製造メーカーの設計や製品をベースに商品化を目指す方式のため、他社ブランドが同じ製造メーカーでODMを利用していると、製品のデザインや機能で差別化を図りにくくなります。
そのため、製品の差別化を図るためには細部の仕様変更が考えられますが、ベースは製造メーカーの設計に依存するため、工夫できる余地があまりありません。
自社ブランドを強く打ち出したい場合や、ユニークな製品を販売したいブランド企業にとっては、大きなデメリットになる可能性がある点には注意が必要です。
2.価格や利益のコントロールが難しい
ODMでは、製品価格や利益率をブランド企業側でコントロールするのが難しい場合がある点はデメリットと言えます。
製品の企画から開発、そして製造までを一貫して製造メーカーが主導するため、製品の原価構造や販売価格の設定をブランド企業が自由に設定できません。
また、製品の部材や品質水準なども製造会社の主導で決められることが多いため、コストと品質のバランス調整が難しいデメリットもあります。
ODMを利用する際は、製造メーカーとの価格交渉や仕様決定におけるブランド企業の影響力が限られる点を把握しておきましょう。
3.製造のプロセスが不透明になる
ODMを採用する場合、製造プロセス全体がブランド企業側から見えにくくなる傾向があります。
なぜなら、製造メーカーが製品の企画段階から製造工程まで一括して担当するため、ブランド側が細部に関わる機会が少なくなるからです。
そのため、部材や製造工程だけでなく品質検査の方法も把握しにくく、ブランド企業側で製品の品質の管理や保証が難しくなるデメリットがあります。
ODMを依頼する際は、製造メーカーの信頼性を十分に確認し、品質管理体制を事前に取り決めておくことが重要です。
OEMとODMの選定ポイント6選

OEMとODMを選ぶ際には、以下6つのポイントが参考になります。
- 自社の開発力・企画力レベルから考える
- 製品に求めるオリジナリティのレベルから考える
- 予算やコストの優先度で考える
- 商品開発から販売までのスピードで考える
- 品質のこだわりと管理体制から考える
- 長期的な目線と戦略で考える
自社に最適な方式を見つけるためにも、ぜひ最後までご確認ください。
1.自社の開発力・企画力レベルから考える
OEMとODMを選択する際には、自社の製品企画や開発、設計に関するスキルやリソースがどの程度あるかを評価することがひとつの判断基準となります。
開発力や企画力を基準にした場合の、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
経験豊富な製品設計チームがあり、技術仕様やデザインを詳細に決定できる高い企画力・開発力がある | 市場ニーズを捉えた企画力はあるが、専門的な設計知識や開発体制が自社には不足している |
自社の「ものづくり」に関する実力や立ち位置を正確に把握できれば、外部委託の最適なビジネスモデルを選べるでしょう。
2.製品に求めるオリジナリティのレベルから考える
競合との差別化を図るために製品に求めるオリジナリティは、OEMとODMの選択に大きく影響します。
製品に求めるオリジナリティのレベルで考えた場合に、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
・市場にまだない新しいアイデア製品を開発したい ・機能・素材・デザインなど細部にまで強くこだわりたい ・ブランド企業が設計の主導権を持ちたい | ・既存メーカーの評価済み製品設計を活用したい ・自社ブランド名で短期間で市場投入したい ・効率的かつ現実的に製品化したい |
発注元が製品に求める「個性」のレベルや、市場における差別化の重要度を明確にすることで、どちらの方式が最適であるかを適切に判断する基準のひとつになります。
3.予算やコストの優先度で考える
製品開発や製造に充てられる予算、または初期投資、そして長期的なコストをどのように優先するかという点は、OEMとODMの選択にとって重要な判断材料となります。
予算やコストの優先度で考える際に、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
まとまった予算があり、独自の製品開発に初期投資をかけられる | 新しい設計や開発に多額の初期投資を避けたい |
ただし、製造ロット数によっても製造単価や必要な初期費用は変動するため、予算だけでなく、将来的な生産規模を考慮して検討する必要があります。
4.商品開発から販売までのスピードで考える
新製品の企画から、商品化までのスピードをどれだけ重視するかは、OEMとODMを選ぶ際に重要な判断基準となります。
商品化までのスピードで考えた場合に、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
・独自の製品設計をゼロから開発し、時間をかけてじっくり完成させたい ・自社のペースで開発を進めたい | ・メーカーの既存設計を活用して商品化までの期間を短縮したい ・トレンド対応や特定シーズンに合わせて迅速に製品投入したい |
一方、他にはない独自の製品設計を時間をかけてじっくりと完成させたいという方針であれば、OEM方式の方が自社のペースで開発を進めやすいでしょう。
求める商品化スピードの度合いを明確にできれば、最適な選択につながります。
5.品質のこだわりと管理体制から考える
製品の品質に対するこだわりや管理体制をどのように考えるかという視点も、OEMとODMを選択する上で重要な判断基準です。
品質のこだわりやその管理体制を考慮した場合に、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
・自社の厳しい品質基準や製造工程を反映したい ・製造プロセスへの監視や品質管理を重視したい | ・製造メーカーの主導で開発や製造を含む品質管理を任せたい |
ただし、製造メーカーに品質管理を全面的に委託する場合は、事前に品質管理体制が信頼できる、また実績があるかを慎重に見極めることが重要です。
6.長期的な目線と戦略で考える
OEMとODMを選択する際は、将来的な事業展開や成長戦略を長期的な視点で考えることが重要です。
ブランド企業の長期的な目線と戦略で考えた場合に、OEMまたはODMが適している企業の特徴は以下のとおりです。
OEMが適している場合 | ODMが適している場合 |
・将来的に製造の内製化を目指したい ・自社の技術力や製造ノウハウを蓄積したい明確な目標がある ・製造プロセスに深く関わり、メーカーと密接に連携して学びを得たい | ・製品の企画・マーケティング・販売など自社の得意分野に専念したい ・製造は常に外部専門業者に委託し、開発負担を減らしたい |
将来に向けた成長戦略や事業体制を長期的に検討することで最適な委託方式を選択できるでしょう。
世界的なOEMやODMの事例を紹介
ここでは、OEMやODMといったビジネスモデルを活用して事業を展開している世界的な企業の事例をOEMとODMそれぞれ以下のとおり2つずつご紹介します。
方式 | 業界 | 企業・ブランド例 | 概要・特徴 |
---|---|---|---|
OEM | 電子機器 | ・Apple,・Dell | ・FoxconnなどにOEMで製造を委託・部品単位でも製造メーカーから供給を受け、効率的な製品供給と高品質を実現 |
アパレル | ・ファッションブランド | ・デザインや仕様書作成後、裁断・縫製・加工など製造工程をOEMで委託・自社工場不要で柔軟な生産・トレンド対応が可能 | |
ODM | 家電 | ・パナソニック | ・洗濯機・冷蔵庫・エアコンなどの一部をODMで製造を委託・自社設計・品質基準を担保しつつ効率的にラインナップの拡充が可能 |
電子製品 | ・Amazon | ・AmazonはKindleやEchoなどをODM委託し、設計のみ提供 |
実例を知ることで、具体的なイメージを持ってOEMまたはODMの活用を検討できるようになるでしょう。
OEMの事例
はじめにOEMの事例を以下2つご紹介します。
- 電子機器業界の事例
- アパレル業界の事例
それぞれ詳しく見ていきましょう。
電子機器業界の事例
大手PCメーカーのDellやiPhoneで有名なAppleは、台湾のFoxconnという電子機器製造専門会社に完成品の製造自体をOEMとして委託している事例があります。
電子機器業界では、OEM方式がビジネスにおいて広く採用されています。
理由としては、多種多様な高性能部品が求められる一方で、すべての部品を自社で開発・製造するのが非効率的であると考えられているためです。
さらに、電気機器PCの内部で使われるCPUやメモリ、ディスプレイパネルや電源ユニットにいたる個別の部品も、それぞれ専門のOEM業者から供給を受けている場合が多く見られます。
この分業体制により、ブランド企業は特定の部品開発に多大な研究開発費をかける必要がなくなり、製品全体の品質や性能を高めて効率的な製品の供給が可能になるのです。
アパレル業界の事例
アパレル業界においても、OEMは一般的に活用されているビジネスモデルです。
多くのファッションブランドが、自社で生地の選定やデザインを考案し、仕様書を作成しますが、その後の製造工程をOEMで委託しています。
たとえば、服の生地を型通りに切る裁断作業や布を縫い合わせて形にする縫製、ボタン付けや刺繍などの加工といった製造過程全般を、専門のアパレル製造メーカーにOEMとして委託しています。
これにより、ファッションブランド側は企画やデザイン業務に注力できるため、多種多様なアパレル製品を生産するための自社工場を持つ必要がなくなるのです。
また、トレンドの移り変わりが早いアパレル分野では、外部の生産能力を柔軟に利用することで、多種類の製品を小ロットで生産したり、売れ行きが好調な製品の急な増産に対応したりする容易が生まれるメリットもあります。
ODMの事例
次に紹介するODMの事例は以下の2つです。
- 家電業界の事例
- 電子製品業界の事例
ODMの事例もそれぞれ詳しく見ていきましょう。
家電業界の事例
家電業界では、ODM方式が多くの企業によって広く採用されています。
理由としては、製品の開発や製造に高度な技術と多額の投資が必要とされる一方、市場の多様なニーズに迅速に応える必要もあるためです。
たとえば、家電製品や電子機器で有名なPanasonic(パナソニック)では、洗濯機や冷蔵庫、エアコンなどの家電製品の一部をODMを利用して製造しています。
製品の一部をODMで効率的に製造することで、パナソニックは自社の設計や品質基準を担保しながら自社製品を販売しています。
ブランド企業はODMとして家電製品の全部または一部を製造・供給してもらうことで、自社で開発や設計に時間や費用をかけることなく、ラインナップを比較的簡単に増やせるのです。
なお、消費者にとっては異なるブランド名で販売されていても、実は同じODM業者の製品であるといったケースも見られます。
電子製品業界の事例
消費者向け電子製品の分野においても、ODMの活用は一般的になってきています。
理由は、電子製品業界では製品のライフサイクルが短く、新製品を迅速に市場投入することが競争力維持のために重要となるためです。
たとえば、大手オンラインストアを運営するAmazonでは、自社ブランドのKindleなどの電子書籍端末や、Echo(スマートスピーカー)といった製品の設計のみをODM業者に提供し、製品を委託している事例が知られています。
これにより、Amazonは自社で高度な電子機器の開発チームをすべて持つ必要がなく、専門的なODM業者の技術力や開発力を活用できます。そのため、比較的短期間で新しい製品を開発し、自社ブランドとして販売できるのです。
OEM/ODMと混同しやすい関連用語
ここでは、OEMやODMと混同しやすい以下3つの関連用語を解説します。
- PB(PrivateBrand:プライベートブランド)
- OBM(OriginalBrandManufacturing)
- EMS(ElectronicsManufacturingService)
それぞれの用語が示すビジネスの形態や特徴を理解できれば、製品の開発・製造委託を検討する際の参考になるでしょう。
なお、OEMとODMも含めて、企画から販売までの各段階ごとに「発注元」と「製造メーカー」の役割を以下の表で整理しましたので、参考にご確認ください。
OEM | ODM | PB | OBM | EMS | |
企画 | 発注元(ブランド企業) | 発注元(ブランド企業) | 発注元(小売業者など) | 製造メーカー | 発注元 |
設計や仕様 | 発注元(ブランド企業) | 製造メーカー | 発注元(小売業者など)または製造メーカー | 製造メーカー | 発注元または製造メーカー |
開発 | 発注元または製造メーカー | 製造メーカー | 発注元(小売業者など)または製造メーカー | 製造メーカー | 発注元または製造メーカー |
製造 | 製造メーカー | 製造メーカー | 製造メーカー | 製造メーカー | 製造メーカー |
販売 | 発注元(ブランド企業) | 発注元(ブランド企業) | 発注元(小売業者など) | 製造メーカー | 発注元 |
PB(PrivateBrand:プライベートブランド)
PB(Private Brand)は「プライベートブランド」と呼ばれ、小売業者や卸売業者が自らの企画に基づいて開発し、独自のブランド名を付けて販売する商品の総称です。
PBは特定の製造方法を示す言葉ではなく、商品を展開する販売形態を表す言葉です。
たとえば、大手スーパーマーケットやコンビニエンスストア、あるいはECサイトが独自の名前で販売している製品がPBに該当します。
PB商品の多くは、OEMまたはODMのいずれかの方式によって外部の製造メーカーに委託して製造されています。
つまり、PBとは「どのような種類の商品か、誰がブランドを持って売るか」を示す言葉であり、製造方式を意味するわけではありません。
一方で、OEMやODMは「その製品をどのように製造委託するか」という製造委託の方式を示す言葉に明確な違いがあるのです。
OBM(OriginalBrandManufacturing:オービーエム)
OBM(OriginalBrandManufacturing)は、「オービーエム」と言い、製造メーカーが自社の名前で製品の企画・設計・開発・製造を担当するだけでなく、製造メーカー独自のブランドの立ち上げも行います。さらに市場での販売活動やマーケティングまでを一貫して行うビジネスモデルを指す言葉です。
OEMやODMが製造メーカーとは別のブランド名で製品を製造することを前提としているのに対し、OBMは製造メーカー自身がブランドオーナーとなり、「自社ブランドの製品を自社で製造し、自社で販売する」ことを意味します。
たとえば、長年培ってきた技術力や開発力、そして製品を生産する能力を持つ製造メーカーが、これらの強みを最大限に活かして、企画から設計、製造、そしてユーザーに製品を届けるまでのプロセス全体を自社の裁量でコントロールできるようになるメリットがあります。
OBMは自社のブランド価値の向上を目指し、市場における自社の存在感を確立したい製造メーカーにとっておすすめのビジネスモデルと言えるでしょう。
EMS(ElectronicsManufacturingService)
EMS(ElectronicsManufacturingService)は、「イーエムエス」と言い、電子機器の受託製造サービスを専門に提供する企業やそのサービス形態を指す言葉です。
EMSは電子機器メーカーから製造に関する依頼を受け、電子基板の実装や製品の最終的な組み立て、品質検査など、製造に関わるさまざまな工程に特化したサービスを提供します。
EMSを提供する企業は、電子機器の製造に必要な高度な生産技術や厳格な品質管理体制、さらには世界規模での部品調達や物流を管理できるのが強みです。
OEMと似ていますが、EMSは特に電子機器分野に特化しており、受託製造の専門家としての役割が強い点が異なります。
多くの場合、製品の設計や仕様は発注元である電子機器メーカーが行い、EMS企業はその設計に基づいた製造を専門に行います。
ただし、なかには技術的な助言や、部品の調達を行うEMS企業も存在します。
OEMとODMに関するよくある質問
ここからは、OEMとODMに関して以下4つのよくある質問に回答していきます。
- OEMとODMの違いをわかりやすく教えてください。
- OEMのメリットとデメリットはなんですか
- ODMのメリットとデメリットはなんですか
- OEMとODMのどちらを採用するべきですか
なお、質問に対する回答の概要を以下の表にまとめています。ぜひ気になるものから確認してみてください。
質問内容 | 回答概要 |
OEMとODMの違いをわかりやすく教えてください | ・主な違いは「設計・開発の主導権がどちらにあるか」である ・OEMは発注元(ブランド企業)が製品の設計・開発を行い、製造のみを外部に委託する方式 ・ODMは製造メーカーが企画・設計・開発・製造まで行い、発注元は既存設計を自社ブランドで販売する方式 |
OEMのメリットとデメリットはなんですか | 【メリット】 ・自社で製造工場を持たずに生産でき初期投資や人件費を削減 ・必要な量だけ委託でき在庫リスク軽減 ・ブランド力強化や差別化がしやすい ・企画・販売などコア業務に集中できる 【デメリット】 ・製造ノウハウが蓄積しにくい ・委託費用が上乗せされ利益率が低下しやすい ・製造メーカーが将来的に競合となるリスクがある |
ODMのメリットとデメリットはなんですか | 【メリット】 ・自社に開発知識や技術がなくても製造メーカーの設計・技術で製品化できる ・開発期間短縮 ・スピーディーな商品化 ・初期コストを抑えて低コスト量産がしやすい 【デメリット】 ・独自性や差別化が難しい ・発注元による価格や原価構造のコントロールが困難 ・製造プロセスが見えにくく品質管理の透明性が低下しやすい |
OEMとODMのどちらを採用するべきですか | どちらが適しているかは企業の状況や戦略による判断には 1.製品開発力・企画力のレベル 2.独自性・ユニークさの重視度 3.予算・初期投資の優先度 4.商品化までのスピード重視度 5.品質・製造プロセス管理へのこだわり 6.長期的視点・ノウハウ蓄積 の6つのポイントを総合的に検討することが重要 |
OEMとODMの違いをわかりやすく教えてください。
OEMとODMの最もわかりやすい違いは、「製品の設計や開発をどちらが行うか」という点にあります。
それぞれの違いを表にまとめると以下のとおりになります。
OEM | ODM | |
設計・開発 | 発注元(ブランド企業) | 製造メーカー |
製造 | 製造メーカー | 製造メーカー |
販売ブランド | 発注元 | 発注元 |
特徴 | 発注側が設計・仕様を決定し、製造のみを外部に委託する方式 | 製造メーカーが企画・設計・開発・製造まで行い、発注側は既存設計を自社ブランドで販売する方式 |
簡単にまとめると、OEMは「自社の設計に基づいて製造を委託する」方式であり、ODMは「メーカーの設計で開発・製造された製品に自社ブランドをつけて販売する」方式と言えます。
この設計・開発の主導権の違いが、両者を区別する重要なポイントです。
h3 OEMのメリットとデメリットはなんですか
OEMのメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・自社で製造工場を持たずに生産できるため、初期投資や人件費を削減しコスト効率を高められる ・必要な量だけ製造委託でき、過剰在庫リスクが軽減される ・自社ブランドコンセプトを反映した製品設計が可能で、ブランド力強化や差別化がしやすい ・製造を外部委託して企画・マーケティング・販売など中核業務に集中できる | ・製造プロセスを外部委託するため、製造技術やノウハウが自社に蓄積されにくい ・委託費用に製造メーカーの利益が含まれ、製品あたりの原価が高くなり利益率が低下する可能性がある ・製造メーカーが将来的に競合となるリスクがある |
ODMのメリットとデメリットはなんですか
ODMのメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
・自社に製品開発の知識や技術がなくても、製造メーカーの設計や技術を活用しオリジナルブランド製品を作れる ・既存リソースを利用して開発期間を大幅短縮し、スピーディーに商品化できる ・初期コストを抑えて低コストで量産しやすい | ・製造メーカーの既存モデルがベースとなるため、製品の独自性や差別化が難しい ・価格設定や原価構造の決定権が製造メーカーにあるためブランド企業によるコントロールが難しい ・製造プロセスが見えにくく、品質管理の透明性が低下する可能性がある |
OEMとODMのどちらを採用するべきですか
OEMとODMのどちらの方式を採用するかは、企業の状況や目指す戦略によって異なります。
どちらが適しているかを判断するためには、以下の6つのポイントを考慮すると良いでしょう。
検討項目 | 内容 |
1.製品開発力・企画力のレベル | 自社の製品開発や企画の能力・リソースがどの程度あるかを確認する |
2.独自性・ユニークさの重視度 | 開発する製品にどれだけ独自性やユニークさを求めるかを検討する |
3.予算・初期投資の優先度 | 製品開発や製造にかけられる予算、特に初期投資の重要度を明確にする |
4.商品化までのスピード重視度 | 商品開発開始から市場投入までのスピードをどれだけ重視するかを考慮する |
5.品質・製造プロセス管理へのこだわり | 製品の品質や製造プロセスをどの程度自社で管理したいか、品質へのこだわりレベルを検討する |
6.長期的視点・ノウハウ蓄積 | 企業の将来的な事業展開や、製造ノウハウを自社に蓄積したいかなど長期的な戦略や視点から判断する |
これらのポイントを踏まえて自社の状況を整理できれば、OEMとODMのどちらがより適した選択肢であるかを適切に見極められます。
まとめ:OEMとODMを理解して自社ブランドの製品を拡大させよう!
OEMとODMの違いが理解できれば、自社ブランドの製品開発をするための最適な外注先を選択できます。
自社の開発リソース、製品に求める独自性、予算や納期、そして長期的な経営戦略と照らし合わせ、最適なパートナーシップの形を見つけることが重要です。
しかし、製造委託の経験がない場合や数多くの委託候補から信頼できるパートナーを選択するのは難しいかもしれません。
特にEC運営において、製品開発の外注に悩む場合は、ぜひお気軽にジャグーへご相談ください。
ジャグー株式会社では、ECモールの豊富な経験と実績をもつコンサルタントが専門的なサポートを行っています。
EC販売における製造メーカーの選定だけではなく、EC運営全体の売上改善や社内運用の仕組み化など、戦略から販売までを一気通貫したEC支援をご提供します。
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